(源泉所得税)納期の特例の承認の取り消し

源泉所得税の納期の特例を受けているが気づいたら給与の支給人員が常時10人以上となっていたというケースもあるだろう。給与の支給人員が常時10人未満でなくなった場合は、遅滞なく、源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出を行うこととなっている。では、税務調査で給与の支給人員が常時10人以上であることが発覚した場合はどのように取り扱われるのだろうか。

「遅滞なく」という言葉は法令用語の時間的即時性を表す言葉では一番時間的即時性がないとされている。ただし、「直ちに」と同様、違法問題に進む場合が多いとされている。
三つの用語の使い分け
よって実務的には一切の遅滞を許さないという厳格な運用ではなく、ある程度弾力的な運用がされているものと考えるが、ここで条文を確認してみると、税務署長による承認の取り消しについては、過去に遡って取り消すとは規定はされていない(青色申告の承認の取り消しの場合は、過去に溯ってその承認を取り消すことができると規定されている)。よって過去に溯って不納付加算税を課されてしまうのかというところが気になるところである。

所法218条 源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出の提出 → その提出の日の属する期間以後の期間は効力を失う
所法217条3項 税務署長はその承認を取り消すことができる → 過去に溯るのか疑問

給与の支給人員が常時10人未満でなくなっていたことに後で気づき、自主的に届出書を提出する場合は、提出日の属する期間以後に効力を失うため、過去に溯って不納付加算税は課されないと思われる。税務調査で指摘を受けた場合は、まずは源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出を提出することを勧奨されると思われる。その場合は自主的に届出書を提出する場合と同様になるだろう。ただし、税務署長により承認を取り消される場合は、過去に溯って、不納付加算税を課される可能性が残される。このあたりは金額の程度や現場で決まる(税理士、納税者、税務署とのやりとり)というのが実際のところだろうか。

なお、納期の特例については「できる規定」なので、納期の特例の承認を受けていても原則通り毎月納付することを選択できるため、条文上納期の特例の取りやめに関する規定はない。よって納税資金を兼ね合いで毎月納付したい場合は毎月納付用の所得税徴収高計算書を使い毎月納付すればよい。国税庁のHPにも取りやめの手続きは当然記載されていない。仮に取り止められる場合でも不納付加算税を受けるリスクを低減するためにも取りやめるべきでない。
また、不納付加算税は毎月納付だろうが納期の特例受けていようが、未納の源泉所得税額の合計額が計算の基礎となるため、一月ごとに区分した各期間の源泉所得税額に課されるものではない。
(平9.6.30裁決、裁決事例集No.53 106頁)

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