社用車の経済的利益と通勤手当の非課税規定

【前提】

・法人は最寄駅から遠くバス等の交通機関も最寄りにないため、従業員は自家用車又は最寄駅からの送迎で通勤しているが、特定の者に対しては法人契約のリース車両を貸与している。
・貸与されたされた車両は主に通勤に使用されるとともに、休日にあっては買い物等の私的な目的に使用されている。
・特定の者にのみ貸与されている理由は、自宅が遠方にあることと、その者が重要な職制にあることによる。
・法人は車両のリース料、ガソリン代、修繕費等の諸経費をすべてを負担している。

【課税関係】

社用車の貸与による経済的利益はすべて給与課税されるし、通勤手当の非課税枠は使用できない。

【理由】

・給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費収び賞与並びにこれらの性質を有する給与 である(所法28)が、経済的な利益をもって収入する場合は、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額とすることとされており(所法36①)、法人の事業の用に供する車両を専属的に利用することにより個人が受ける経済的利益の額は、その車両の利用につき通常支払うべき使用料その他その利用の対価に相当する額となる(所法令84の2)。
・本ケースの場合、社用車の貸与の主たる目的は通勤に使用することであるから、業務以外の部分については経済的利益の供与に該当する。
・一方、通勤のために自転車その他の交通用具を使用することを常例とする者への通勤手当は通勤の距離の応じて非課税枠が決められている(所法9、所法令20条2)。
・ここで疑問に思ったことがある。社用車を貸与が主に通勤利用の場合、車で通勤していることにかわりはないのであるから、その経済的利益に対して通勤手当の非課税規定が使えるのではないかということ。つまり通勤手当をいったん受け取り、同額を使用料として会社に支払ったことと同じ、または、使用料は使用料として会社に支払い、通勤手当を正々堂々ともらうことと同じなのではないかということである。
・通勤手当の非課税規定では交通用具については自家用車とは文理上は解釈できない。よって車両を使用して通勤していれば該当するのではないかという疑問である。
・通勤手当は車両費に対する実費弁済としての性格が強い。簿記的に考えると下記の仕訳となる。仮に車両費、通勤手当、経済的利益がすべて同額だとすると社用車の場合はCash outが生じることとなる。

(通常)
車両費 / Cash
Cash / 通勤手当(通勤手当)←全部非課税
(社用車)
車両費 / 経済的利益 ←全部課税とすると
税金 / Cash

・たしかに通勤手当の非課税規定はマイカーを予定している規定であるとは思うのだけれど、通勤手当の非課税規定が使えないとなると、税金分のCash outが余計に生じることとなり、お金で通勤手当をもらったときよりも経済的な負担が生じてしまうこととなる。

・しかし、所得税法9条1項5号に戻って条文を確認してみると、「その通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当」とあり、支出していることが要件となっている。

・よって通勤手当の非課税規定は使用できないということになる。

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